スパッタ用電源の解説

DC電源、RF電源,各種波形

DC電源は、直流電源と言い最もシンプルな電源である。

金属ターゲットなどの導電性ターゲットを用いた放電を行う。ITO膜などの導電性セラミックターゲットにも利用できる。小型、価格が安いなどのメリットがある。

RF電源は、金属などの導電性ターゲット、酸化物などの絶縁性ターゲットのどちらにも使える。周波数は、13.56MHzが一般的である。電波の漏洩を防ぐ必要がある。実験室で行う新規膜材料のテストには、大変便利であるが、価格が高い、サイズが大きいなど生産機用には、課題がある。

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DC電源は、左図a)にあるように同じ電圧が継続して続く。RF電源は、d)図のように、パルスやAC(交流)波形に比べて、周波数が多い。パルスなどは、およそ50~150KHz程度を使うが、RFは13.56MHZを一般的に利用し、場合により60MHzなど更に高い周波数を使うことがある。(現場のスパッタリング薄膜Q&A: 172p)


パルス電源

DC電源と同じく、導電性ターゲットに用いられる。反応性スパッタにて、酸化物などの絶縁膜、例えばSiO2,TiO2などを成膜した時に、DC電源では、アーキングが多発するなどの問題が生じる。パルス化して、OFFタイムを作ることで、カソードの非エロージョンに堆積したイオンのチャージを電子で中和し、アーキングを低減できる。また、パルス間隔、周波数を変えることで、膜の構造を最適化できる。

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左図は、スパッタリングで用いられる電源モードを示している。比較のために、最上段は、DCモード、中段が、一般的なパルスモード、下段がHIPIMS用モードである。パルスは、ONタイムとしては、90%以上取り、成膜速度が落ちないようにして、OFFタイム時に、ターゲットに溜まった電荷を中和している。HIPIMSの場合には、ONタイムは、0.1~5%程度であり、その間に貯めた電力を瞬間的に放出して大きなプラズマを生成し、緻密で新規な構造を持った膜を作っている。


AC電源

交流電源のことである。反応性スパッタで絶縁物を成膜する時に、パルス電源を用いたり、交流電源を用いたりする。パルス電源は、ON,OFFタイムを変えられるが、交流波形では、サイン波を使い、基本的には50%のデューティー比(全周期の中のONタイム比率)となる。そのため、1台で用いられることは少なく、2台用いて、デュアルカソード用に使い、180度位相をずらして、交互にONタイムを利用する方式が定着している。DC電源の項のe)の波形として、通常利用される。

これは、ロータリーカソードであるが、2台利用してそれぞれにサイン波、(交流)を印加し、180度位相をずらしておけば、各カソードはアノード、カソードの役割が交互に代わる。

アーキング低減、アノードレスに対処できる。



HIPIMS電源

HIPIMSは、High Power Inpulse Magnetron Sputtering の略であり、パルス電源の1種である。大きな電力を瞬間に印加することにより、プラズマ密度を上げ、スパッタ粒子の反応性を向上し、緻密で表面平滑性の良い、硬い膜を作ることを目指した技術である。デューティー比は0.1~5%程度であり、成膜速度は70%程度に落ちるが、GaN単結晶などの高付加価値製品の開発などに注目されている。

日本のメーカーとしては、東京電子(株)がある。

パルス電源の項に、波形のイメージを載せてあるので参照されたい。

HIPIMSで成膜したITO膜

極めて平滑性が良く緻密である。

Ti膜DC(上)

Ti膜HIPIMS(下)

HIPIMSの場合は、結晶粒が小さく、緻密である。


スパッタシミュレーション

スパッタ膜の開発では、最適なプロセス条件の決定や、装置設計、スパッタ膜の分布、組成、構造などを検討する必要があり、従来は試行錯誤的に多くの実験を行ってきた。シミュレーションを活用することで、多くの条件の実験を、シミュレーションで省力化できれば、開発時間の短縮やコストの削減が可能になる。右図で、Cu密度分布、電子密度分布を見て、Cu+密度分布を比較すると、ビジュアル的に各傾向が捉えられる。(ペガサスソフトウエア社技術資料)

 

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Cu原子密度分布

Cu+密度分布

電子密度分布