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小島啓安 博士(工学) 名古屋大学 客員教授
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お問い合わせはEメールまたは電話で: TEL080-8083-2403
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スパッタリングプロセスによる薄膜事業の 研究・開発・生産 をサポートします。
長期から短期まで各種コンサルティング業務
日刊工業新聞社より「現場のスパッタリング薄膜 Q&A」第2版を出版しました。437ページ3560円税込みです。初版に比べて、プラズマ密度の測定、ロータリーカソードなどの追加、および新しく”未来へ”という項目で、今後のスパッタ膜の可能性を考えてみました。
この本は、初めてスパッタリングで薄膜の作製をしたり開発する方のための手引書として、また薄膜技術者の参考書として利用して頂けるように具体例をたくさん載せました。
現場にいれば、失敗から学ぶことも多いと考えて、敢えて失敗例も加えました。
本の内容についてのご意見、ご質問がありましたら、お気軽にご連絡ください。
ご連絡お待ちしております。 earth-tech@r9.dion.ne.jp 小島宛
コンサルティング料金に関しましては、
ご要望内容によって、ご希望を相談させていただきます。
スパッタ技術をもっと活用して頂き、多少の社会貢献もできたら良いかと思っております。
どうぞお気軽にご相談ください。
スパッタ装置を初めて扱う方、生産上でのトラブルで困っている方、革新的なスパッタ方式を考えたい方など.....
歓迎します。
オープンイノベーションが注目されています。グローバル市場での競争の激化、消費者ニーズの早い変化に対応するために、従来型の自前主義の閉鎖的方法ではなく、必要な研究開発能力、技術、を広く外部市場から調達し効率的なイノベーションを目指すいわゆるオープンイノベーションが世界の潮流となってきています。これらの動きに、貢献することが、目標です。
スパッタリングのキーワード
スパッタを行うに際して生じる重要な現象や、スパッタで用いる電源など最近の動向を踏まえてスパッタのキーワードを選んでみました。ロールコーターは、フィルム基板に必要ですし、開発補助手段として、シミュレーションの活用も期待されています。
薄膜コーティングにおける密着性は、製品化する場合に大変重要なコンテンツです。コーティングは、基板の表面に薄膜をスパッタして作成し、様々な機能を付加することで、新たな価値を創成します。そこで密着性が悪く剥がれてしまったら、コーティングの役割は果たせませんし、価値が無くなってしまいます。生産現場にて、密着性を向上する、密着性を維持した安定な生産条件を構築することは、コーティング製品の必須条件です。
密着性を向上するポイント
①基板、ターゲット及びチャンバー内の清浄化
②基板と膜の相互作用の最大化 物理的なアンカー効果、化学的な反応による結合効果
③薄膜全内部応力の最小化
これ等のポイントを考えながら、密着性を向上するスパッタプロセス条件を検討します。スパッタ条件は、多くの場合にトレイドオフの関係にあります。使用する装置のコンポーネント(電源、カソード、アノード、ガス配管、排気ポンプ、モニター、基板搬送機構など)の最適化を図りながら、スパッタ条件を決定します。また、アーキング(異常放電)には、注意が必要です。ターゲットなどに、痕跡がないかチェックしたら良いかと思います。
スパッタリングによってできる膜は、再現性が良く、均質であることが利点です。しかし様々な条件によって、目的とした膜が成膜出来ません。膜質を向上させ、均一な膜を安定して作るためには、何が必要でしょうか?
膜質向上対策としてのポイント
①ガス導入の均一性
②プラズマの均一性
③スパッタ条件の適正な組み合わせ
ガスが均一にターゲット表面に供給されているか、プラズマはカソード上で均一に生じているか、経時変化はないか、またスパッタパラメーターとして、T-S(ターゲット基板)間距離は適正か、ガス圧力、パワー、温度などをチェックする必要があります。できるだけプロセスをリアルタイムで把握するには、各種モニターを活用することが好ましいです。発光モニターは、有効な手段の一つです。同時に、アーキング(異常放電)をチェックすることも必要です。大きなアーキング(異常放電)のみでなく、マイクロアーキング(小さな異常放電)も監視することも重要です。また、電力方式は、エネルギー源として重要ですのでRF、DC,パルスなど、どの方法にするかよく検討する必要があります。欲しい膜ができた場合には、コストが重要ですので、スケールアップを見据えながらのプロセス選択となります。
スパッタリングを用いた成膜でしばしば問題になるのは、基板、あるいはすでにコーティングした膜へのダメージです。ITO膜などでは、酸素負イオンなどが議論されています。ここでの提案としては、以下の3点を挙げておきます。
①成膜速度の高速化
②アーキング(異常放電)の極小化
③プラズマ技術の高度化
成膜速度を高速化することにより、ダメージが加わる時間の短縮(主として反応性スパッタでの高速化)、アーキング(異常放電)の生じる条件を極小化(ロータリーカソードを用いた全面エロージョン化とパルス、サイン波などの波形の最適化)、デュアルロータリーカソードとアクティブアノードを併用することで、カソード電圧を下げ、アクティブアノードによる電子捕捉の効率化によるダメージ抑制など。
反応性スパッタでの高速成膜制御の応用例/ |
光学膜 レンズ、プリズムなどに使う反射防止膜、フィルターなどの光学膜は、基板がガラスから樹脂に変わりつつあります。レンズなどに使う透明で硬いプラスチックは、ガラス転移点が低く、低温での成膜が必要です。光学膜は、従来、蒸着プロセスが主流でしたが、低温で密着性の良いスパッタ膜へ変わりつつありますが、従来のスパッタ方式では、成膜速度が遅く、基板温度上昇が大きな問題となります。PEM(プラズマエミッションモニター(コントローラー))を用いた高速成膜方法は、基板温度を上げずに、密着性の良い膜を作成可能です。 |
装飾用膜 時計、デジタルカメラや、携帯電話など多くの商品でその外観に、鮮やかな色が求められています。PEMを使った方法としては、2通りあります。一つは、ZrNx,TiNx膜などの窒化物を使って、遷移領域制御によりその化学量論性を高めて、この膜のxを1.0に近づけて金色を出す方法、2つ目は、金属膜の上にTiO2などの透明膜をつけ、2層にして干渉色を使う方法です。この場合には、透明膜の厚さを変えれば、多くの鮮やかな色が出せますが、膜が厚いために高速に成膜出来ることが、コスト、基板温度の面で鍵となります。 |
透明導電膜 タッチパネルや有機ELなど市場が広がっています。ITOを例にとりますと、2通りあります。1つは、ITOターゲットを使う場合、比抵抗値を最適に保つためのO2ガス導入の自動化です。酸素空孔量を制御するために、O2ガスを微量導入しますが、ターゲットのIn発光値を用いてO2量を制御することにより達成します。2つ目は、ITターゲットを使った高速成膜です。TiO2膜やSiO2膜と同様に金属の発光(ここではIn)を制御することにより、遷移領域制御してITO膜を高速成膜します。 |
バリア膜 プラスチック基板を用いて、有機ELなどのフレキシブル化を行うには、水、酸素などのバリア膜が不可欠です。透明バリア膜には、SiOxNy膜のような多元の組成が有望視されていますが、このような膜の高速化も可能です。またSiO2膜からSi3N4膜に徐々に変化する傾斜膜も有効と考えられますが、導入するガス組成をO2からN2に徐々に変えることで出来ます。密着性も重要です。そこで内部応力を減らすために、ポリマーなどを挟んで多層化も行います。多層化は、ピンホールなどの膜欠陥による貫通を防ぐためにも必要です。 |
光触媒膜 TiO2膜のアナターゼ型の結晶構造が必要とされています。触媒活性を出すには、結晶粒が小さく、酸化還元の程度が重要となります。TiOx膜のxの値を制御するのに、遷移領域制御が有効です。プラズマ発光で制御する発光のポイントを変えることで、xの値を微量調整することが可能となります。 |
ハードコーティング膜 ドリルやバイトなどに用いられるハードコーティングでは、密着性と同時にコストが重要です。密着性の向上には、スパッタ粒子エネルギーを増大するためのパワーアップ、コストダウンには、高速化が必要になります。 |
GENCOA社(プラズマエミッションモニター:PEM)製品のお問い合わせ |
技術、仕様: アーステック 電話 080-8083-2403 または
見積、注文: 富士交易 菊地 電話 03-3274-2312
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*****昨年の春、神奈川県立花菜ガーデンにて*****
今月の話題ということで、毎月スパッタ、プラズマ、薄膜について関連したテーマを取り上げ紹介するコーナーを作りました。内容としては、本、論文、トピックス、スパッタに関する技術用語などを考えています。スパッタの初心者にも役立つかと思います。
ここでは概略を記載し、ブログには少し詳しく書きたいと思いますので、興味のある方は、どうぞブログにもお立ち寄りください。
今月から、スパッタに関する技術用語を解説していきたいと思います。
1回目は、
アーキング (異常放電)です。
この現象は、DCスパッタにおいて、Al膜のスパッタをしているとき、あるいは反応性スパッタにおいて、金属ターゲットを用い反応性ガスを加えた化合物膜、特に酸化物膜を成膜しているときによく生じるトラブルです。通常のスパッタでは、生産性を上げるために、設定電力値を少し無理して上げた場合などにも生じます。
現象としては、ターゲットとアノード間、ターゲット上の非エロージョン部に堆積した+電荷とターゲットに加わっている-電荷との短絡などによって大電流が流れ、スパッタ膜の溶解、ターゲットの割れや溶解が生じて、膜やターゲットが大きなダメージを受けることです。この場合には、大きな生産上のロスになるだけでは無く、Si、Crなどの脆いターゲットの場合には、割れたり、欠けたりしてターゲットが使えなくなる場合もあります。
ブログに、この項で紹介しましたスパッタ技術用語についてもう少し詳しく書きたいと思います。興味のある方は、見てください。
Up dated 2021,1,29